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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「大海は細流を厭ぬよ」

「すなわち清濁合わせ呑むもの」

「濁った水をも清めてみせる」

「安心致しましてございます」

薬剤車が引き出された。レキレキロクロクと轍が鳴る、美童の紅丸後押しをする。それに続いて道人が行く。門まで見送ろうとするのだろう、モカが一斉に従った。若侍が案内した。雪洞の火が華やかに、その一行を押し照らす。

「道人!」と宗春呼び止めた。

「名古屋を去ってどこへ行くな?」

「はい」と云うと振り返った。「城中蛾眉ノ女、珠珮珂珊々タリ、鸚鵡ヲ花前ニ弄シ、琵琶ヲ月下ニ弾ズル境へ。……殿にはどこへ行かれます?」

「山果、猴摘ミ、池魚白鷺含ム、仙書一両巻、樹下読ンデ喃々の境へ」

二人同時に大笑した。

「ごめんくだされ」

「たっしゃで行け」

飄々と立ち去る薬草道人、轍の音も遠ざかり、やがて全く聞こえなくなった。

立ちつくしていた尾張宗春、

「最後まで俺を案じてくれたわい」

スタスタと奥へ引っ返してしまった。

ちょうどその夜も明け近い頃、海に添った道を南の方へ、道人の一行辿っていた。

「紅丸紅丸、大風が吹くぞよ」

不安そうに道人云ったものである。

二人の賭けどっちが勝つか?