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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
聞くがいい。帆鳴りの音を! まるで唄でもうたっているようだ。順風! 順風! いい航海だ!」
ひどく太郎丸はしゃいでいる。
それにはそれだけの理由があった。
想いを懸けた浜路をはじめ、仁右衛門、宗三郎、お仙などという、自分に刃向かった者どもを、一人残らず引っ捕え、胴の間の奥に一つにして、監禁をしてあるからであった。所は船中、周囲は海、あたりにいるのは味方ばかり、少しも邪魔される心配はない。以前には脱牢を企てられたが、今度はそんな心配はない。で、思うままに振る舞うことが出来る。そこで悠々と構え込み、珍味は薩摩へ帰ってから! こんなことを考えているのであった。
もっとも心外な点もある。いや大いに心外なのである。宗春を一味に加えそこなったこと! 何と云っても心外である。しかしその代り名古屋を去る際、思うまま武威を示したことが、多少心を慰めてはいる。
「一切は薩摩へ帰ってからだ! 新たに計画することにしよう」
そこで今は何を置いても、早く薩摩へ帰りたいものと、それを願っているのであった。
太郎丸背後を振り返って見た。
二隻の僚船が従いて来る。一杯に帆が張られてある。