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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
頭上に大円を描きながら、尚白烏は舞っている。
「さて出立!」と薬草道人「猪十郎さんや、車をお曳き」
その時であった、山影宗三郎、跪座いて道人の袖を引いた。「私事は山影宗三郎、水戸家の家臣にございます。主命を帯びて御岳へ入り、道人様をお探しし、名古屋へまでも入り込みましたもの、失礼ながら道人様には、甲斐の徳本様ではございますまいか?」
すると道人頷いたが、「さようでござる、愚老が徳本!」
「おおやっぱり徳本様で! それではなにとぞ江戸表、水府館までご来駕のほど……」
「何かご用でもござるかな?」
すると島津太郎丸、身をぬきんでて云ったものである。「只今将軍家吉宗公、ご大病の身にございますれば、お診察のほど願わしく、私よりも懇願仕ります」
「さようでござるか、よろしゅうござる」道人あっさり引き受けてしまった。「どなたであろうと病人なら診察ましょう。……さあそれでは道を変え、東海道から江戸へ行こう」
「一同お供仕ります」こう云ったのも太郎丸。
レキレキロクロクと轍の音、間もなく響いて一行十一人、粛々と旅へ出かけたのは、それから間もなくのことであった。
シーッと掛かった警蹕の声! ここは柳営大廊下、悠々と進むは薬草道人、すなわち甲斐の徳本である。