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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
「ああそれでは南なのね」
「ひょっとかすると北かも知れない」
浜路なかなか悄気ようとはしない。「螢ヶ丘ではないかしら?」
「いかになんでも道人様が、六文と一緒には住みますまい」
「あのそれでは狼谷?」
「道人様が仙人でも、狼を家来にはなさるまい」
もうこうなっては駄目である。浜路俯向いて考え込んだ。さすがに彦兵衛もそれを見ると、ちょっと気の毒になったらしく、
「それはそうとお嬢様、山影とかいうお武家様、ほんとによい方でございますかな? たとえば信頼出来るような?」
「それならもうもう大丈夫!」浜路はじめて明るくなった。「人品勝れた立派な方、そうして大変ご親切で、物柔かでもございますの。キリッとしたご器量で、時々冗談もおっしゃいますが、厭らしいところはちょっともなく、あの、そうして……よいお方で」
どうしたものか彦兵衛老人、フッフッフッと含み笑いをした。「お嬢様もお年頃、そういうお方をご覧になれば、みんなよいお方に見えましょうなあ」
浜路、頬でも染めたかしら? いやいや赧くはならなかったが、それこそ火のように真っ紅になった。
「厭な小父さん」と云ったものの、大して厭でもなさそうである。