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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

洩らした言葉はこれである。「諦められないヨ……、諦められないヨー」誰にともなく叫んだが、驚きが余りに大きかったためか、涙というものが出て来ない。

お仙、ボーッとしてしまった。

少し心が静まるに連れ、はじめて涙がこみ上げて来た。クッ、クッ、クッ、クッと咽喉が鳴る。咽び泣きの声が洩れたのである。

「……ああやっぱり前兆だった。螢ヶ丘のお吉さんの所で、昨日まで遊んで暮らしていたが、今朝から何んとなく胸が躍り、どうしてもじっとしていられないので、萩原の方へでも行ってみよう、何んだか宗さんに逢えそうだ、こう思って出て来たんだが、逢いは逢ったが死んじまったヨー」またもお仙むせび上げた。「でもうっちゃっては置かれない、鳶や烏の餌食になる。……葬ってあげなければならないんだが、厭だ厭だ葬るなんて! ……妾も死のう、死んだ方がいい! ……」お仙ヒョロヒョロと立ち上がったが、またベッタリと坐ってしまった。「宗さんと一緒に死ぬのなら、死ぬ張り合いだってあるけれど、一緒に死のうと約束もせず、妾に黙って死んでしまった後で、一人死ぬなんて寂しいねえ。……せっかく死んであげた後で、冥土で宗さんに邂逅って、コレ、馬鹿者、なぜ死んだ、などと叱られたら詰まらないねえ。