Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

Lisez 雪之丞変化 (ゆきのじょうへんげ) de 三上 於菟吉 (みかみおときち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 344 083 caractères · 673 écrans

Aozora Bunko

そんなわけで、広海屋は、闇を辿りつつも、まだ、心のどこかで高をくくっていた。

――なアに、総檜、五百坪の普請とはいえ、店の一棟二棟、焼け落ちたとて、何を驚くことがあろう。うしろに建ち並んだ、蔵の中には、江戸中の、いかなる大名高家、町人一統が、どんな注文をよこそうとも、すぐ間に合うだけの材料は積んであるのだ。その十棟の土蔵は、コテを取っては、日本一といわれる左官が塗ったもの、どんな猛火も怖れることではない――

「さあ、しっかりせい! そなたも広海屋ほどのものの女房――高が、火事ぐらいに、身ぶるいをしてどうするのだ。そら、もう抜け道もおしまいだ。外へ出れば、明るすぎる程あかるくなろう――しっかりせい!」

そう女房をはげましつつ、地下道のどんづまりまで来て手さぐりで、揚げ蓋を起す枢機をまさぐるのだった。

一二

地下道の揚げ蓋を刎ね上げて、縋り合いながら、裏庭、築山蔭に出た広海屋夫婦。二人とも、その瞬間、瞳を射るあまりに猛烈な焔の色に、思わず目を蔽うた。

見よ! 眼前に聳えた広海屋本店の、巌丈堅固な大厦は、すでに一めんに火が廻って、吹き立って来た北風に煽られた火焔は、天井を焼き抜き、廂を匐い上って、今しも、さしもの大厦の棟が、すさまじい轟音ともろともに、がらがらと焼け落ちつつあるのだった。