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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
頭のお絹を遠巻きに、警護していた鷺組の徒が、答えて笛を吹いたのである。
しばらくの間は森の中、鳥笛の音で充たされた。
やがて一時に静かになり、森を出て行くお絹の足音、シタシタと町の方へ遠ざかり、全く物音消えた時、一本の立ち木の根もとから、囁く声が聞こえて来た。
「紅丸紅丸、面白かったなあ」薬草道人の声である。
「ガーガーガー、コーコーコー、烏と鷺の啼き合わせ、ほんとに面白うございました」童子紅丸の声である。
「御岳にいるより面白いよ。だがひどく騒がしいなあ」
「ほんとに騒がしゅうございます」
「町には騒がしくていられまい、こう思って私は名古屋へ来ると、この森を住居にしたんだが、どうもここにもいられそうもない。……ボツボツどこかへ出かけようかな」
「それがよろしゅうございます」
「さあさあそれでは出かけよう、猪十郎さんや、車をお曳き」
轍の音が森に響き、次第次第に町の方へ行く。町へはいったが深夜のこと、家々では雨戸を厳重にとざし、燈火一筋もれていない。レキ、レキ、ロク、ロクの轍の音、両側の家々へ反響するが、古今の名医薬草道人が、通っているとは気が付かないらしい。