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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

絶体絶命の鷺組のお絹

「大胆なものか、迂濶なのさ」

「お前さんさえ捕らえてしまえば、水戸の鷺組は全滅だ。そこで島津の烏組が、名古屋の町中あばれ廻り、翼を伸ばすということになる。お気の毒さま、競争は勝ちだ!」

「オイお絹さん」

と副将のお竹、憎々しい嘲笑を浮かべたが、

「何んとかお云いよ、え何んとか! それとも云うことがないのかい、気の毒だねえ、気の毒だよ」

何んと云われても鷺組のお絹、黙って地面を見詰めていた。お絹の視線の落ちた所に、巨大な鉄盤が置いてある。

絶体絶命の鷺組のお絹

黙ってはいるが鷺組のお絹、心の中ではいろいろと、考えに耽っているのであった。

「こいつは妾の失敗だった。さあどうしたら遁がれられるかしらん? ……小蛇を使って聞き出したは、『二方遁がれ』の間道口、西丸大奥の床下から始まり、一方の出口は御器所の杉の木、もう一方は上名古屋の、密林中だと知ったので、用意もせずに飛んで来たんだが、なるほどねえ、莫迦な話さ、『二方遁がれ』と承知して、そいつを利用した烏組だもの、二つの出入り口へ固めを付け、人を配って剖かれないように、仕組んでいるのは当然じゃアないか。急いては事を仕損ずる! つまらない格言だが今度という今度、ひどくこの胸に滲みっちゃった。