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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

壁の三方に戸口がある。扉があって錠が下りている。錠を外して扉をあけなければ、どの方面へも進めない。どうしたら錠を外すことが出来るか? 合い鍵がなければ外れっこはない。

お絹ちっとも驚かなかった。グイと懐中へ手を入れると、一本の畳針を取り出した。と、そいつを錠穴へ入れた。すぐビーンと錠が外れた。

「妾達忍び衆の身にとっては、錠など何んでもございません。一本の針さえございましたら、城門でも破ってお目にかけます。そういう方面にかけましては、夜盗以上でございますよ。敵国の城の大奥へ忍び、城主の寝首を掻くことさえ、妾達には充分出来ますので」これがお絹の説明であった。

二人はズンズン進んで行く。と、丁字形の辻へ出た。

「お待ちくだされ」と鷺組のお絹、辻の真ん中に佇んだが、何か物音でも窺うように、じっと聞き耳を引き立てた。

「左手の地下道は相当広く、よく坦々とならされております。これは名古屋城西丸へ、通じている道でございましょう。それに反して右手の地下道は、狭くて険しゅうございます。思うに恐らくこの道は、御器所の森の大杉の木、『二方遁がれ』の間道口、そこへ通っているところの、連絡道でございましょう」