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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
「任」を説く薬草道人
「往生おしよ! めでたくねえ!」
グルグルと解いたは紫の扱き、首へ纒うとキュ――ッひと絞め! くたばったかな? いや駄目だ! 人の馳せ来る足音がした。
「邪魔がはいった、残念だねえ」呟いた時には荻野八重梅、身をひるがえして社殿の裏へ、早くも姿を隠したが、ちょうどこの頃名古屋城内でも一つの事件が起こっていた。
「任」を説く薬草道人
名古屋城内の奥御殿、豪奢を極めたその一室、向かい合っている二人の人物、尾張宗春と薬草道人、しめやかにさっきから話している。間遠に聞える笑い声、大広間における無礼講の、その笑い声に相違ない。
「是非ともお供を致したいもので……」こう云ったのは尾張宗春、話のつづきに相違ない。
「よくござらぬよ、そのお考え」こう云ったのは薬草道人、宥めるような調子である。「例を引くことに致しましょう、わしが御岳から出る時でござる、彦兵衛さんという老人が、そんなことをやはり云いましたっけ。わしと一緒に御岳を出て、跣足の旅をしたいとね。そこで私は申しました。お前さんの行くのはよいとして、お神さんや娘さんをどうするかと。……そこであなたへも申します、あなたが旅へ出るのはよい、だがそうなったら六十二万石、ご家臣の数も多い筈で、その人達がどうなりますな?」