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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
「さよう」と云ったが尾張宗春、しばらくの間、黙っていた。
一夜ゆくりなく木小屋へ泊まり、薬草道人に感化されて以来、にわかに彼の心の中へ、漂泊の念が萌したのである。従来とって来た大名ぐらし、そいつが厭になったのである。そこで道人に扈従して、旅へ出たいと云い出したのである。
「何も考えるには中らない」薬草道人云いついだ。「ご家臣の人達一人のこらず、動顛するでございましょう。柳営へ知れればお咎めを受ける。ご家運さえも危うくなる。もしものことがあろうものなら、ご家臣達は禄を離れ、浪々しなければなりますまい。とんでもないことでございますよ」
「しかし」と宗春物憂そうに、「過去の穢れを洗い落とす! そういう心の湧きました際には、それにふさわしい行動を、とるべきものではございますまいか」
「急いでとってはいけませんな!」
「は?」と宗春訊き返した。
「物には順序がありますので」
「とは云え順序を追って行くほど、心にゆとりのない際には?」
「なんのなんのどんな心にだって、ゆとりをつけることは出来ますよ。それが出来ないと思うのは、我がまま者の坊ちゃんだけで」
「ははあそうするとこの私は、我がまま者の坊ちゃんで?」