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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「なるほど」と道人頷いた。「さてはお金が欲しかったので。……しかしご様子を見たところ、貧しいご身分とも思われぬ。……大金を盗んで何んにされるな?」

幹之介無言、返辞をしない。

「いやよろしい」と薬草道人、押して訊こうともしなかったが、卒然として口を切った。「恋でござろう、幹之介殿! この見当決して外れぬ。お隠しなさるな、お打ち明けなされ。……武家の娘ごでござるかな? それとも市井の婦人などで?」

「はい」と観念した幹之介、「女太夫にございます」

「女太夫? ああさようか。……で年は? あなたよりも?」

「いささか上にございます」

「さてはそそのかしに逢われたな」肺腑を突いた言葉である。「他国しようというような、相談をされたのではござらぬかな? そのため大金必要となり……」

「はい」といよいよ観念し、「それに相違はござりませぬが、むしろ他国は私より、持ちかけましたものにございます」

「眠剤と偽わって砒石の大毒、そなたへ渡したのもその女でござろう?」

「それとて女としましては、砒石などとは夢さら知らず、やはり眠剤と心得て、手渡しくれたものと存ぜられます」

「たしかにさよう思われるか?」