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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

光明暗黒合一の期は?

こう云って膝を進めたが、薬草道人不意に立った。「ついておいで、裏庭へな、ここは部屋内、人目立つ。……それから茶釜、持っておいでなされ」

部屋を出ると廻廊づたい、裏庭の方へ歩き出した。後につづいた志水幹之介、両手に茶釜を捧げている。

「ここでよろしい」と薬草道人、立ち止まった所は木の下闇。「釜の湯を地面へぶちまけなされ」

云われるままにぶちまけると、ポーッと立った白い湯気、プーンと芳香が四方に匂う。

「さて」と云うと話し出した。「くどくは云わぬほんの一言……そなた執着をおとげなされ!」何んという不思議な言葉だろう! だが道人云いつづけた。「私は薬師、間違いはござらぬ。さっきそなたが釜へ入れた薬、眠剤ではなくてまさしく砒石! そこでこの私の思うには、砒石をそなたへ与えた女、恐らく島津方の間者であろう。そなたをたらし、そなたの手で、宗春卿の毒殺を、企てたものに相違ござらぬ。何故とそなた訊くかも知れぬ。何んでもないこと、常識で解る。宗春卿から承われば、島津家同志を語らって、徳川幕府へ弓引こうと、いろいろ奸策を巡らした結果、宗春卿をもおびき出し一味に加えようとしたとのこと。