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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

六文の巣窟へ迷い入る

ふざけているね、大莫連のくせに。でもマアせいぜい三月だろう、ナーニこの里へ帰って来るよ、情夫の太兵衛が糸をあやつり、させる所業に相違ないよ」

「気の毒だねえ、その息子は、だがそういう馬鹿息子が、チョイチョイあるので助かるのさ。それはそうとお万さんはね、もう駄目だということだよ。せっかく助かった左の眼も、いよいよ潰れるということだよ」

「へえそうかい、可哀そうだね、でもあの人は因果応報さ、随分アクドク稼いだんだものね。それでケチで出し惜しみをして、借金をしたら借りっぱなし、返した例がないんだからね」

こんな話が一軒の家から、大っぴらに戸外へ聞こえて来た。

六文の巣窟へ迷い入る

そうかと思うと一軒の家からは、喧嘩の声が聞こえて来た。

「承知出来ねえ承知出来ねえ、盗むなら一足みんな盗め、草履片っぽ盗むなんて、しみったれ阿魔だ、承知出来ねえ。さあもう片っぽ盗んでくれ!」

「何を云うんだよ、このお波め! 手前この間妾の小袖の、左片袖だけぎ取って、自分の小袖へくっつけたくせに! 知らねえと思うと大あて違い、手前の小袖は縞物だのに、妾の小袖は飛白なんだからね。どこの世界に縞物の小袖へ、飛白の片袖を付ける奴があるかよ」