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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

姦策を巡らした荻野八重梅

薪十郎の門附けにならい……ではお紋さん」と元気よく云った。「腕を揮わせていただきましょう」

「ではどうぞね、今度こそうまく」

「まず大丈夫でございましょう」

「浅間の社地の附近には、妾達烏組の連中が腕によりをかけて待っております」

「では」

と二人別れたが、この日も午後に近い頃、七ツ寺の蝮酒屋は、例によって客で一杯であった。

昼飯を食べに沢山の客が、賑やかに入り込んでいるのである。

と、そこへ女門附け、編笠で顔を隠したのが、フラリとばかりはいって来たが、云うまでもなく八重梅。「一膳ご飯をいただきましょう」

腰をかけると云ったものである。

姦策を巡らした荻野八重梅

蝮酒屋に入り込んで来た、門附け姿の荻野八重梅、「何をするにもまず最初に、敵の様子を探らなければならない」持って来た昼飯をしたためながら、四辺の様子をうかがった。酒屋と云っても煮売り屋で、今日で云えば縄暖簾、ただし一層大がかりであった。三十人近くのお客さんが、店に一杯立てこもり、盛んに話しながら飲み食いしている。

「お城下の様子が変りましたね、大分真面目になったようで、お侍さん方は威張って歩かず、女子衆達は派手を止め、商人衆は家業熱心、お職人衆は仕事に精出し、ピンと引きしまったじゃアありませんか」