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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

山窩大いに浮世を語る

武士あがりらしい山窩が云う。

山窩大いに浮世を語る

するともう一人の若い山窩、

「元亀、天正の戦国時代から見ると、浮世は進んだということだが、いったいどこが進んだんだろう?」

「手数をかけて金をかけて、時間をかけて冗なものを作る! それが『進んだ』ということなら、今の浮世は進んでいるよ」こう云ったのは銅兵衛という山窩、「食い物で云うと早解りがする、戦国時代の食い物は、俺らの食い物と大差はない、生の獣、生の鳥、生の野菜、生の魚、せいぜい焼いて食うぐらいのものだ。ところが今日日の連中ときては、ソレお醤油、ソレお味噌、ソレお砂糖、ソレお酒、などというもので料理する。さて出来上がった食い物はというに、味はともかく滋養分がない。つまりは冗の食い物なのさ」

「お前の理屈からいく時は、進むってことはよくねえんだな?」

「そうさ、手間をかけてムダな物を作る、どう考えたってよくねえなあ」

「では何故みんな進みたがるんだろう?」

「考えが間違っているからよ」

「一人ぐらいはあるだろう、考えの間違わない人間が?」

「そりゃあ時々あるらしい、だが大勢にゃあ敵わねえ」

「へえ、どうしてだい? 教えてくんな!」