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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

姦策をする伊集院

と、彦兵衛真面目になり、「お嬢様もよいお方、山影様もよいお方、そういうお方のお頼みを、むげに退けるもお気の毒、と云ってあからさまには明かされない、ほんの道順だけ申しましょう。道人様のお住居はな、螢ヶ丘の北を過ぎり、木場の屯所の南を過ぎ、七面岩の絶壁を上り、さてそれから……」

と云い出した時、今まで黙っていた聾者のお六が、突然大声で喚き出した。

「窓から、窓から、あの野郎が、妾を引っ張ったあの野郎が、ジロジロ家内を覗いているよーッ」

驚いて二人が振り返ってみると、もう人影は見えなかったが、いずれ誰かが二人の話を、立ち聞きしていたに相違ない。彦兵衛すっかり機嫌を損じ、堅く口を結んでしまった。

覗いていたのは伊集院五郎で、つんぼのお六に怒鳴られるや、横っ飛びに飛んで林へ隠れた。

「驚いたなあの娘め、耳は遠いが眼は早い、惜しいことをした、もう少しで、道人の居場所を聞き出せたものを」

姦策をする伊集院

伊集院五郎林の中で、腕を組んで考えた。「螢ヶ丘の北を通り、木場の屯所の南を過ぎ、七面岩の絶壁を上り……さてそれからどう行くのだろう? 是非ともこの後を聞きたいものだ」