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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「はい有難う存じます。それでは送っていただきましょう」浜路も素直にこういうと、ユラリと馬に跨った。

今までの敵が味方となり、星空の下、雨に濡れた野を、萩原の方へ歩ませた。

と、行手から無数の提灯、大勢の者が走って来た。萩原部落の連中が、浜路を探しに来たらしい。もう送って貰う必要はない、そこで浜路は山窩達と別れ、馬をそっちへ走らせた。

後へ引っ返した山窩の群、にわかに相談をやり出した。

「この商売がイヤになった。俺らは裟婆へ行こうと思う」「そうだなア、それがいい。では俺らも行くとしよう」「もう悪いことは止めようぜ」「お互いマトモに働こうよ」「では山塞へは帰らずに、このまま里へ出て行こう」「それがいいそれがいい、一緒に行こう」

で山窩達は山を下った。薬草道人の感化である。偉人の片言というものは、くだらねえ奴らの百万言より、どんなに身に沁むか解らない。山を下った山窩達、いずれ人の世で善いことをして、立身出世をしただろう。

さてその時から五日経つ。ここは螢ヶ丘六文の巣窟、そこの束ねをするお吉の部屋。――

その床の上に寝ているのは、他ならぬ山影宗三郎である。