轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かんかんむしはうたう

かんかん虫は唄う

吉川 英治

「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,006 字 · 182 页

青空文庫

「混血児か混血児でねえか、よく眼の色を見てくんな」

「だって、トムなんていう名は、日本人にはないだろう」

「詳しくいえば千坂富麿っていうんだけれど、舌が廻らねえや、トムで分るじゃねえか」

「とにかく明日出直して来なければだめだな。それにしたって、伝染病患者だから医務室で許可をするかどうか分らない」

「そんな馬鹿なことがあるかい」トム公は食ってかかった。

「自分のおっ母あに会うのに、他人が許可をするもくそもあるもんか。おら、ここからはいって行くぜ」

「そうかい、無断ではいって行くならはいって行くがいいだろう。その間に、おれは前々から刑事さんに頼まれていることをしておくからな」

と、老小使も彼といっしょに廊下へあがって、電話室の扉に手をかけながら振り向いた。黄色い歯がげらげらと笑った。

トム公は、あっと足を竦めると、突然、爆片のように素ッ飛んで小使部屋から外へ逃げ出した。そして再び、うらめしそうに、三階の病室の灯を見上げていた。どうしても、彼は母の顔が見たかった。ちょっとでも、自分の声を母に聞かせたかった。

「おっ母あ。……おっ母あ」

心のうちで叫びながら、病院のまわりを歩いていた。