轻松读懂日语经典作品
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,006 字 · 182 页
野菜屑
「あ、馬をお持ちですか」
「はい、クンプウというサラブレッド種の黒鹿毛を」
「クンプウ? へえ、あれはおたくの持ち馬ですか、すばらしい人気馬ですな」
「さほどでもございませんけれど。……あの只今のお礼と言っては失礼ですが、今日は主人が参りませんから、まだ入場券をお買いにならないのならば私たちといっしょに、会員券でおはいりなさいましな」
「そりゃ大助かりです、どうぞ」
と、今村は馭者台の端から下りて、従者のように、彼女たちを馬車の扉から迎えた。
――遠い人混みの中で、結果をみていたお光さんや黒眼鏡や樫井たちは、くすりと、笑いをしのばせながら、
「今村のやつ、まるで、川上音二郎の下にいる桜井何とかいう壮俳にそっくりだなあ。……どうだい、あの臭いしぐさは」
と競馬場の中へ消えたうしろ姿まで見送っていた。
そしてお光さんは、何かささやくと、みんなと別れて、ひとり、二人曳きの帰り俥を飛ばして、どこかへ急いで行った。
野菜屑
「あ、ここよ。ここでいいのよ」
お光さんは俥の上で腰を浮かした。
競馬の前から乗ったお客様ではあり、スマートな広東服や腕環などから見ても、俥夫は、いずれこの俥は祝儀の出る門口へつくだろうと予測していたのに、羽衣町の裏通りのきたない縄のれんの軒先で止められたので梶棒を迷わせた。