轻松读懂日语经典作品
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,006 字 · 182 页
彼の航路
「帽子が見える! 帽子がッ」
豆菊のかなきり声が、疾風にちぎれて、列車の黒煙といっしょに、後方へ飛んで行った。
彼の航路
水族館の魚みたいに、懲治監の不良児たちは、監禁室の底にヘバリついて寝ていた。青いガラス窓の外にさっきから彷徨している人影にも、なかなか眼がさめなかった。
「オイ、鋲を抜けよ。鋲を抜けよ」
そういう外の幻に、やっと、一人が眼をこすり出した。そして、ほかの者の耳を順々に引っ張り合った。
「トム公だぞ。トム公だぞ」
「えっ、帰って来たのか」
「ほんとか」
「ほんとだとも」
彼らは、畳の下の捻廻しを持ち出して、たちまち一枚のガラス板を外した。トム公は、にこにこしながら飛び込んで来た。彼は、からだじゅうのポケットを探って、手あたり次第に持って来たものをそこへつかみ出した。アンパン、ハーモニカ、ピストル、煙草、洋刀、ドロップ。
「食え、食え、食え、みんな。まだあるぞ、いくらでもあるぞ」
「偉いなあ、プリンスはやっぱり偉い。おいらのプリンス」
「約束どおり帰って来たぜ」
「持って来たぜ」
「ばんざい!」
アンパンの饗宴が初まった。煙草の曲喫みが初まった。餓えた中に物のあること!