轻松读懂日语经典作品
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,006 字 · 182 页
回転盤
「競馬場へ行って見るさ」
「だけど、入場券がないもの」
「厩舎へ行って貰って来い。……あ、だが、おまえは未丁年者だからだめだ」
「馬券を買わなければいいでしょう」
「駄目駄目、観客としてもはいる資格がない。馬丁に連れて行ってもらえよ。厩舎の通用門からはいるんだ」
「名刺をください」
「辰公に言えばわかる」
トムは駈け出して島崎の家へ行った。馬丁の辰公と彼とはなお懇意だった。辰公の好意で彼はズボンと上衣と、そしてやや大きすぎるけれど赤革の編上靴まで借りることができた。
根岸の場内へ行ってみると、きょうの最興味である特別のハンデキャップ競走が内外人の人気を煽って、一等観覧席からひろい柵のまわりに至るまで人間をもって埋まっていた。午前に居留地のある外人の持ち馬であるアメリカン・トロッターが大穴を出したというので、ファンの眼は血走っていた。
ここの競馬場の歴史は古い。まだ大小の刀をさした丁髷日本人たちが、維新の革命に血みどろになって騒いでいた慶応年間に幕府から敷地を請求して、そのころからもうぼつぼつ外人間だけでやっていた最古の競馬場であるのだ。それだけに、ここの競馬倶楽部は国際的なスポーツ熱と上海式な賭博本能をあおる組織にできていた。