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かんかんむしはうたう

かんかん虫は唄う

吉川 英治

「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,006 字 · 182 页

青空文庫

なって、そのうちにトム公も交じっていた。

南京豆の三角な袋が、事務卓の上に、十ばかり腹を裂いている。その殻をわる音が錯雑とはじまった。トムの手が時々、お光さんの肩の上からそれをつかんで行った。

「食べてばかりいないで、そろそろ議事を進行しようかね」

お光さんが言った。こん夜の議長格然と。

「三浦君――」

彼女は、男に対しては、君をつけ、君をもって呼ぶことにしている。

「調べてくれたの? 監獄の方は」

「学校に、そこへ金曜ごとに行く教誨師がいるから、それに依頼して、調べて貰ったところが亀田は三号舎の独房に収監されているが、健全だと言っていた。明日は行って、差入物をして来る」

彼女は、トム公の方をふり顧って、

「トム公、聞いたかえ、よく聞いといて、亀田の家族に話して安心させておやりね」

感謝をあらわしながら、トム公は、黙ってうなずいた。お光さんは、パッと、指先と唇のあいだから煙草の煙をはいて、

「それから、あの、樫井君、石炭屋の高瀬とあの夫人や娘を、どこかで捕まえる機会はまだ見つかりません?」

樫井は、ふけだらけな頭をかいて、

「どうも、うまく探れねえんだ」

「じゃ、落第よ、君は」