轻松读懂日语经典作品
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,006 字 · 182 页
空弾だと思うならば、撃ってみましょうか、見本にネ」
彼女は、事もなげに、菩提樹のこずえに向って、一発、実弾を放した。
「まだ、五発あるわ」
今の短銃の音に、墓場のあいだに、チイハの夢占をむさぼっていた人間たちは、びっくりして飛び起きた。そしてコソコソと逃げてゆく跫音を、黒眼鏡も、お光さんも、愚連隊たちも、黙って、聞き過ごしていた。
お光さんは、重ねて、
「名まえは? 君の」
「高橋」
と、遂に、黒眼鏡もふるえながら言いだした。
「高橋? それから」
「高橋八寿雄」
「住居は」
「東京」
「うそ。……ほんとのことを仰っしゃいな」
「東京だから東京だって言うのに、信じなければしかたがない」
「うそ、うそ。柳田商会の伝票へ書いてあったのは、長者町八丁目、盛心館としてあったじゃないの」
「それは下宿先だ」
「ご職業は」
「木綿問屋ということも、きのう柳田の店で話していたはずだ。知っているならば、くどく聞き給うな」
「お生憎様。君は、まずその黒眼鏡を外してはどう? そんなもので、世間がごま化されていたら滑稽だわ。ね、トム公」
トム公は、さっきから、彼女の侍者のようにまた、今にもつかみかかりそうに、鋭い眼をしていたが、黙って、うなずいた。