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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

と、宗春は立ち上がった。精神衰えてヒョロヒョロだ。フラフラと歩くと戸口へ行った。だが隣室から閂が、ガッシリ下ろされていると見え、押しても突いてもひらかない。

「こっちはどうだろう?」とまたフラフラ、もう一つの戸口へ行ってみたが、やっぱり駄目だ、動かない。

「駄目だ」と呻くと坐ってしまった。

誰もいないか音もない。

またも精根次第に疲労れ、岩壁に寄りかかると尾張宗春、朦朧状態に落ち入ってしまった。

御器所の森、大杉の木の前、ひそひそ話しているお絹とお仙。

「どうしたんだろうね、お仙さん、小蛇が帰って来ないじゃアないか」

「そうだねえ」と云いながら、お仙ヒュ――ッと口笛を吹いた。「帰って来たらしいよ、お絹さん」

「おやそうかい、有難いねえ」忍び龕燈の蓋をあけ、大木の腐穴へ差し向けた。とはたして一条の細紐、スルスルと這い出たものである。

ヒョイと取り上げた組紐お仙、

「胴に紙片が巻き付けてあるよ」

ほぐして読むと鷺組のお絹、「おお有難い入口が解った」

その夜が明けて朝となった時、一人の武士が名古屋城の北手、上名古屋の林を歩いていた。

思案に余った宗三郎

享保年間の上名古屋辺は、いわゆる郷で農家が飛び散り、田畑や林の区域であった。