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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

『黄帝坐して明きらかならざれば、すなわち人主勢いを奪わる』奪われようとしているのだよ。『幸臣星は五帝座の東北、親愛の臣を主る、明きらかなればすなわち吉、罔なればすなわち凶』ところで今は罔なのだ。……これを人界にあてはめて云えば、黄帝はすなわち将軍家、幸臣星はご親藩、大きな声では云われないが、ご三家の一方と見てもよい。ところで動揺している五諸侯星座だが、島津はじめ大禄を食む、外様大名と見てよかろう。面白くないな、天下は乱れる。そうは云ってもこの天文は、今にはじまったことではない。久しい前からの天文だ。で、そいつを確かめようと、この名古屋へ入り込んだのではあるが、さて名古屋へはいって見て、一層天文が凶相をとり、幸臣星が罔さを加え、不軌の相を現わしているのは、どうもまことに困ったものだ。おっ、何んだ、あの星は!」

さも意外というように、儒者風の人物声をはずませた。

「松前、松前、あれが見えるかな、幸臣星の傍らに、形は小さいが光の強い、気味の悪い新星が懸かっているのが?」

「は、そう云えば幽かながら……」

「あれは江戸では見えなかった星だ」

「御意の通りにございます」