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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
「幸臣星座の一つではない」
「新しく産まれた星のようで」
「幸臣星座の西手にあるのが、儲弐の位の太子星座だ」
「はいさようでございます」
「そこから迷い込んだ星とは見えない」
「御意の通りにございます」
「幸臣星座の北手にあるのが、宿衛を主る常陳星座だ」
「はい、さようでございます」
「そこから迷い込んだ星とも見えない」
「御意の通りにございます」
「そこで勢い五諸侯星座から、遣わされた星と見てよろしい」
「これはごもっともに存じます」
「しかもその星がせせっている、幸臣星の光をな」
「ははあ、さようでございましょうか」松前にはそこまでは解らないらしい。
「ううむ」とにわかに儒者風の人物、一種不思議な呻き声を上げた。「術語で云えば燕鄭星、普通に云えば盗み星だ! それからあたかも尾のように、一道の黒気が垂れている。松前松前、見えるかな?」
「いえ、私には見えませぬ」
「そうであろう、これは見えまい。がともかくも行ってみよう」
「先生、どちらへ参りますので?」
「黒気の立っている場所へだよ」御器所の方へ小走った。
この頃例のトヤ駕籠は、島津太郎丸の大屋敷の、表の門へ横着けされた。
門をはいると建物を廻り、広い中庭へ舁ぎ込まれたが、そこに一宇の別棟があり、そこの雨戸があけられた。