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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「ああお仙だよ、組紐のお仙! あの両国の茜茶屋以来、随分しばらく逢わなかったねえ」

「いや昨夜チラリと見た」

「そうさ御器所の地下室でね」

「おい」と伊集院声を怒らせ、「約束はどうした。茜茶屋での約束!」

「木曽の御岳へ出て行って、宗三郎様をとっ捉まえ、色仕掛けでグニャグニャにし、江戸へ帰そうという約束かえ?」

「うんそうだ、その約束よ」

「御岳で宗さんはつかまえたよ。そうしてお前の悪巧みを、みんな話してしまったよ」

「悪い女だ、約束にもとる! 金を返せ! 五十両!」

「手つかずに持ってはいるけれど、そっちへもどすのはマア止めよう。ケチなお前から五十両、ふんだくってやったと話したらね、宗さん大変喜んでいたよ。機会があったらもっともっと、引っ剥いでやれとこう云ったよ。オイ伊集院さん、もう五十両お出しよ」

「呆れたなア、この女は! でこの名古屋へはいつ来たのだ?」

「宗さんの後を追っかけて、少し前から来ているのさ」

「ははあそれでは宗三郎を捉え、今度こそ色仕掛けでタラシ込み、俺との約束を果たす気か」

「大違いの真ん中だよ、山影宗さんと一緒になり、宗さんに仇するお前さんを、とっちめてやろうとこう思っているのさ。