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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「幹様お起きなさいまし」

「うん」と云ったが起き上がらない。

「幹様お起きなさいまし」

「うん」と云ったがまだ寝ている。

「憂えがあるというように、坊やはねんねでございます。そのうち自然と泣き寝入り、そこで寂しいというところで、妾アそろそろ帰ろうかしら」片膝を立てたものである。

「帰る?」と咎めたが幹之介、ムックリ起き上がると睨みつけた。「もうその調子か! 見抜いたな! 俺の行き詰まった境遇を! ふふんさすがは薄情だなあ」

「そうさ!」と笑ったが荻野八重梅、そろそろ奥の手を出すらしい、「そっちが薄情に出なさるから、ああさこっちだって薄情で行くよ。……ねえ幹様」と膝を突き、スルスルと寄ると手を延ばし、幹之介の肩を抱くようにした。「それとも打ち明けてくださいますか?」

情を持たせて覗き込む。「行き詰まったというお身の上を」

「八重梅!」といった幹之介の声、剣気があって物凄い。「一緒に死んではくれまいなあ」

「そうですねえ」とニコニコした。「真っ平ご免と申しましょう」

「そうか」

と云ってまた寝かかる。

それを引き止めると云ったものである。「大小お捨てなさいまし! 野山を越えて行きましょう! 頬冠りの似合う秋ですよ」