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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「うむ」と云ったがシャンとなった。「それじゃア一緒に逃げてくれるか!」

「お苦しそうなご様子は、ここしばらく見えていました。真面目なあなた、妾のため! お気の毒とは思ったが、切れるのは厭、捨てられるのも厭、まして捨てるのは厭々と、じっと黙っておりましたものの、覚悟は決めておりましたよ」

ホーッと溜息、尾を引くように、幹之介の口から洩れたものだ。

「そうであったか! 手を合わせる!」じっと見た眼は真剣である。「それじゃア本当にこの俺と他国してくれるというのだな?」

「たかが妾は河原者、お侍さんとおっこちたら、体に箔が付きますよ」

「そうでもあるまい……お前ほどの人気! ……そいつを捨ててこの俺と、……恋冥加というやつだなあ。……名古屋を落ちてさてどこへ?」

「江戸へ!」と云って背をもたせた。「妾がしますよ、立て養い」

「ああ江戸へか! ……江戸もいいなあ。……そうしていつ?」と呼吸を呑む。

「あなたさえよければ、サアこれから!」

「行こう!」と立ち上がった幹之介。

「だって旅用の金がなけりゃア」荻野八重梅ズッシリと云った。「まとまって二三百両欲しいねえ」

幹之介ベッタリ坐ったものである。