Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
十
※(歌記号、1-3-28)いかに弁慶、さても唯今の機転更に凡慮のよくなす業にあらず……
と、冬太郎の謡う声が聞こえて来た。
(殿は向こうか。よオし、では……)
熊太郎は小走った。
冬次郎の謡う声を聞いたのは、戸ヶ崎熊太郎ばかりでなく、虎の伏した形に刻んである大岩の蔭に身をひれ伏し、敵や何処? 九十郎や何処と、見廻していた範之丞と、織江との二人にも聞こえて来た。
十
戸外の騒動には関係なく、阿蘭陀風の建物の、阿蘭陀風の寝室では、家治とお浦とが話していた。
「わしは大変寂しいのだよ。誰も彼もわしにものを隠してのう。……奥へ行けば女どもが、にわかに話を外へ反らし、あらぬことをいい出すし、表へ行けば家来どもが、やはり話を外へ反らして、あらぬことをいい出すのだよ。……それでいて蔭ではわしのことを、いろいろうわさしているらしいのだ」
白熊の毛皮のかけてある長椅子、それへ倚りながらこういっている家治、その家治に手を取られながら、お浦も長椅子に腰かけていた。
身分の相違は甚だしくて、ほとんど比較にもならなかったが、心に相通う何物かがあって、それで結びついているからであろう、そうやって寄り添って話している二人が、変にも畸形にも見えなかった。