Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
十七
(愚図愚図してここにいる間に、司馬という男と九十郎とが、もしも恐ろしい策動でもしたら?)
大変なことだと彼女は思った。
十七
彼女もいわば箱入り娘で、世間のことなど知らないはずであったが、わずかの間に生命にかかわる、貞操にかかわる一大事にぶつかり、艱難辛苦をしたがために、そうして兄の範之丞よりも、その性質が理智的であり、また意志的でもあったがために、世間を見る眼、人を見る眼も、兄よりはかえって実際的であった。
そういう彼女の眼から見ると、この家の主人の司馬又助が、迂散に思われてならなかった。
「ねえ、お兄イ様」
と少しくどく、叱られるのを覚悟の上で、織江はもう一度いって見た。
「藩のお重役へ申し出ること、これは少しくあわただしく、差し控ゆべきかとは存じまするが、ここを出て町の旅籠へ泊まる、というのはかえって安全のように、妾には思われるのでござります。主人が留守でありましても、婆やさんにことわって出ればよく、置き手紙いたしてもよろしいはずで……」
しかしここまでいって来た時、大勢の足音が玄関の方で聞こえた。
(はてな?)
と二人は耳を澄ました。
と、足音は少し離れている、道場の方へはいって行った。