Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
二
「越中守様のお手を通し、幸い手に入れた切手三枚、これを利用し屋敷へ入り込み、異国好みの田沼めの、仮装の酒宴の乱痴気騒ぎの、隙を窺って貴殿には、戸ヶ崎氏を介添えとし、きっと九十郎めをお討ち取りなされ。……拙者は断じて機会を見出し、田沼めを刺して国をみだる元根を、この世から消す決心じゃ。仕事は大きい油断してはならぬ」
いつもは沈着の殿ではあったが、今夜やるずば抜けた荒料理、そのことを思えば心が躍る、とそういったように声に顫えと熱気と、殺気とをこめていた。
と、この時、これ以前から、一人の年取った百姓が、大根の荷をかつぎながら、一行の後からついて来たが、アーッと大きな欠伸をした。
驚いて一同は振り返って見た。
「爺」冬次郎は鋭くいった。「そちどこからついて来た?」
「この大根でごぜえますかな。この大根売り物でねえんで」
二
「大根のことをいっているのではない。どこから従いて来たかと訊いているのだ」
「よいお天気でございますとも。この分なら明日も大丈夫で」
「アッハッハッ、聾者なのか」
冬次郎は苦笑いをした。
百姓は六人を追い越して行った。
そうして行く手の三叉の道から、右の方へヒョイと反れ、遙かの彼方に見えている、百姓家の方へ歩いて行った。