Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
六
「そうよ」
と九十郎は尻眼を飛ばし、お吉の顔を見返ったが、
「止めたところで止まらねえ俺だ、愚痴も口説も聞き飽きた。未練のあるうちよ、そんなもなア」
振り切ろうとする袖をいよいよ、堅くとらえてお吉は放さず、
「わしゃもういわぬ、悋気はいわぬ、あくどくいったこれまでの厭味、堪忍しておくれよ九十郎さん! ……厭だ厭だ別れるなんて厭だ! ……義理や掻い撫での人情で、何んで妾がお前さんのために、こうまで下がった商売しようぞ! 先の出世、行く末の安楽、何んでましてやそんなことを思って、私娼夜鷹に零落れよう! ……思っておくれ妾の心を! 好きだからだよ、お前さんが! ……そういう妾を振りすてて……行くとはあんまりな、あんまりでござんす! ……従いてく! 妾ア、どこまでも従いてく!」
「遅いや!」
とそいつを振りもぎり、なお這い寄って手に搦むお吉を、九十郎は邪見に退け、
「半月遅エや、半月なあ。……秋社の梅林の花見帰りに、ゆくりなく助けた大家の娘……」
「何んだとえ?」
「おっといけねえ、こっちの話だ。……お吉、それじゃアもう逢わねえぜ」
「阿漕だ! ……九十郎さん……そんな非道!」