Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
五
織江に逃げられては仕方がない。――こう思って九十郎は熊太郎の剣を、辛うじて引っ外して修羅場を遁がれ、お吉の家へ逃げ込んだところ、思いもよらず織江がいた。
「どうしたのだ?」
と訊いたところ、
「お前さんが部下を引き連れて、織江とかいう武家の娘を、取り返すためこの界隈の、冬次郎とかいう人の隠れ家を襲う――ということをお前さんの口から、前もって妾ア聞いていたから、どうなることかと心配していると、近くで切り合いがはじまったという、いよいよやったねと気にかかり、土間に立って様子を聞いていると、誰とも知れず露路の向こうから、『織江様アーッ』と呼ぶ声がし、それに答えて門口の向こうから、『織江はここに、ここに織江は』と、そういう声がするじゃアないか。さては織江とかいうその女、切り合いの場所を遁がれ出て、こんなところへ来たと見える、捕えてやろうと出て行って、首を締めて気絶させ、縛って二階へ抛り上げたのさ」
と、そうお吉はいったものである。
「素晴らしい気転だ。立派な手柄だ」
と、九十郎は礼をいったが、そういう義理がお吉にあった。
五
そういうお吉のいない留守に、いかに何んでも暴力をもって、織江を自由にするということは、九十郎にも気がさすのであった。