Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
三
そこでお吉は逃げることにした。
船は湖を渡って行く。
諦めてしまえばそこは水性、もうお吉の心の中には、九十郎のことなど残っていなかった。
三
(これからだっていい運は来るさ)
ナーニあんな世を狭めた男、廃者といつまでも一緒にいるより、別れて一人となった方が、どんなにいい運が来るかしれない。
そんなことを思っていた。
(当分団八を足にして、……)
こんなことも思っていた。
(団八、厭な野郎だが、云って見りゃア命の恩人、自由になってやらなけりゃアならないだろう)
その辺は心得ているのであった。
(とは云え綺麗な心から、妾を助けてくれたんじゃアない。妾の躰が欲しいものだから、そこで助けてくれたまでさ、友達の頼みを裏切って、恋女の命を助けたってものさ。頼みにならない野郎ったらないよ。そこは心に締めて置いて、いいかげんのところつきあって、頃を見計らっておさらばするがいい)
蒼褪めて見える鼻の高い顔を、随分寒い風に晒らし、鬢の毛をサラサラ靡かせながら、お吉は湖面を眺めていた。
団八はすっかりいい気持ちであった。
(今こそ私娼でおちぶれてはいるが、昔は吉原の花魁だ、腐っても鯛、上玉だ。