Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
四
「まこと旅用の貯えなど、多分に所持はいたしませぬが、せっかくのご所望わずかなりと、妾がご用立ていたしますゆえ……」
いいいいそこは色情を資本に、世を過ごして来た彼女であった。眼を細め唇をすぼませ、次々に浪人どもへ秋波を送った。
浪人どもは顔を見合わせた。
と、めいめいの表情へ、卑しい好色の慾望が浮かんだ。
「金もいいが……それよりもな……」
「何しろ我ら饑えているて」
「そこで一つ……かけ合ってみろ!」
「ご婦人!」と一人の浪人が、ニヤニヤ笑いを笑いながら――でも急いで引っ込ませ、わざと厳しい顔をつくり、
「用がある、こっちへ参れ」
「ならぬ!」と叫んで伊織の範之丞は、刀の柄へ手をかけた。
四
「何を!」
「こやつ!」
「ジタバタ騒ぐな!」
「騒がば膾じゃ!」
「賽の目に斬るぞ!」
一斉に刀を振り上げて、範之丞を取り囲んだ。
「伊織様、いえいえあなたは! ……」
じっとしておいでなさりませ。こいつらは浪人無頼漢、ほんとうに斬るでござりましょう。一人に多勢敵いはしませぬ。あなたのお体は妾には大切、ナーニ妾の体など、百千人に嬲られた滓。こいつらに嬲られようとどうされようと、いってみれば施こしくらいのもの、悲しくも恐ろしくもありゃアしません。