Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
十一
場末などに住んだらかえって気づかれる。繁華の巷にわざと住み、町人その他に身をやつし、出入りに注意したならば、おりから一揆の騒動あって、見慣れぬ人々も入り込んでおり、おそらくかえって感づかれまいと、こう考えてやったことであった。はたしてそれが図にあたって、慧眼無比の貝十郎から、今日まで在所を見あらわされなかった。
その今日になった先刻、勘助があわただしくとび込んで来て、貝十郎と配下二人が、用ありそうに雑踏の城下をしのびやかに歩いて行ったと告げた。
冬次郎は勇躍した。
「今度こそ遁がさず貝十郎を討て!」
で、熊太郎たちを引き連れて、こうして宿を駈け出たのであった。
十一
冬次郎としては貝十郎は、年来の詩文の友であり、友情あつき仲であったが、今はかえって反対であった。田沼を討とう討たせまいの、事件をはさんで幾回となく、二人は争い斬り合ったが、塩尻の諸角覚蔵方で、貝十郎のために翻弄的に、内土蔵の中へとじこめられたことが、処士であり浪人の味方であっても、そこは貴族の御曹司であり、貴族趣味から遁がれられないところの、冬次郎にとっては前代未聞の恥辱、いうにいわれぬ忿懣となって、貝十郎に対し公憤以外、私怨を感ぜざるを得なかった。