Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
湖畔の血煙
一
……さあさあご兄妹出立出立!」
狩り立てるようなこの言葉に、意気込んだのは範之丞であった。
「司馬氏、千万忝けのうござる! そこまでお運びくだされたか、まことにご任侠、幾重にもお礼! ……妹よいざ! さあ行こうぞ!」
「はい」
といったものの織江の心は、疑惑の雲に包まれていた。
(あわただしくて空々しい)
そんなように思われてならないからであった。
さりとてこれといって非を打つべき、的確の難所もなかったので、不精不精に立ち上がった。
「方々」
と又助は玄関へかかると、道場の方へ声をかけた。
「ご出立じゃ、参られい!」
「応」
と答える声があって、十人ばかりの若侍が、ドヤドヤと姿を現わした。
湖畔の血煙
一
一面の枯れ芒、その奥に低い湖面を背負い、引き上げられてある漁船の縁に、股をひらいて腰をかけ、九十郎は待ちかねていた。
(服部兄妹を返り討ちに、お吉も殺して水葬礼、その後で楢屋へ押しかけて行き、どうせ婿入りなど出来ぬ躰、強請って大金ふんだくり、明けるも待たず逐電)
と、こう思って待ちかねているのであった。
十日ばかりの月があって、芒を灰色に湖面を銀に、遠い山々を墨色に、ぼかして朧にかかっていた。