Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
三
俺など問題になっていないようだ。……こういう一本気悪くないなあ)
そう思わざるを得なかった。
(俺のようになってはお終いだ。向こうを推量しこっちを斟酌し、法を冷厳に行うかと思うと、時々詩文に逃げたりする)
「殿様お召しにござります」
若侍が出て来てつつましくいった。
三
田沼意次は奥の部屋にいた。
武家の統領、最高貴人、将軍家吉宗、家重、家治、三代に歴仕し枢機に参じ、いつも中央にいた人物だけに、何んともいわれない品位があった。
この頃意次は六十八歳、でも非常に若やいでいて、髪多く白髪など少かった。眉と眉との間が広く額は高くて抜け上がってい、鼻ばかりは太く高く、剛頑の気象を現わしていたが、眼は細く口も小さくそれに首が長くて細く、全体が華奢に出来ていた。公卿のようなところがあった。
黒塗り蒔絵の円火鉢の胴を、皺の少い細い指で撫で撫で、背を少し猫にして、決して大きな声など立てず、いつも囁いているような声、そういう声でポツリポツリと、その前に端座し相手をしている、十二神貝十郎と話している様子は、まことに温厚なご隠居様であって、今が浮沈の別れるところ、権勢が傾くか挽回出来るか、その瀬戸際に立っている人物――などとは少しも見えなかった。