Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
六
久しい以前からこの二人を、頬冠りをした職人風の男が、ひそかに尾行けて歩いて来たが、この時やはり微笑した。同心の白須源吾であった。
「ご覧」と冬次郎は熊太郎へいった、「うちこわしの大衆、次第次第に、稲荷堀の方へ向かうではないか。……田沼の下屋敷へ向かわせているのじゃ。外伝、新助、勘助の手合いが」
六
「それも殿のご命令で?」
「うむ」と冬次郎は頷いた。「そうせよとわしが命じたのじゃ。田沼の下屋敷を破壊せよと! ……かりにも老中の下屋敷が、市民によって破壊されたとあっては、名聞としても田沼意次、地位にいることは出来まいからな」
「ごもっともにござりまする」
暴徒の数はいよいよ増した。一所では富豪の家の、閉ざされた門に大八車を寄せ、それを足場に門内へ入り、内側から門を破るものがあった。一所では米屋を襲い、運び出した米俵を大道へ積み、各自担ぎ去るにまかせていた。
群衆にまじってお吉がいた。範之丞もい織江もい、貝十郎さえ雑っていた。各自が相手を知らなかった。いつの間にか群衆に捲き込まれ、人の渦から遁がれようとしながら、容易に遁がれることが出来ず、押され揉まれ追い立てられ、群衆の潮の流れる方へ、自然と流れて行くのであった。