Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
十五
「あれーッ」
と声を上げたのである。
しかしそこは狂女であった、彼女の声に驚いて、三匹ながら太い尾を巻き、背を円くし首をちぢめ、い縮んだ獣の様子を見ると、かえって可愛らしくなったらしい。
「狐よ狐よ親子狐! ……まあ子狐の可愛らしいことは! ……狐よ狐よ!」
と声をかけながら、バタバタとそっちへ走り寄った。
と、それに驚いて、クルリと背を向けると三匹の狐は、縁を伝わり逃げ出した。
「逃げるじゃアないよ。狐よ狐よ!」
三味線のことなど打ち忘れ、お浦は狐の後を追った。
狐は縁から裏庭へ飛んだ。
で、お浦も裏庭へ下りた。
狐の習性で逃げながらも、絶えず背後を振り返って見た。
それがお浦には誘うように見えた。
「狐よ狐よ逃げるじゃアないよ」
いいいいどこまでも追って行った。
左の外れの廃屋の、裏口の辺で三匹ながら、狐の姿は見えなくなった。
(きっとこの家へはいったんだよ)
お浦は屋内へはいって行った。
「お浦様アーッ」
と呼ぶ声がした。
見れば男装武士姿の女が、柱に紐でくくりつけられている。
「まあ」
とお浦は声をあげ、今度は三匹の狐のことなどを忘れ、興味をもってその人を見詰めた。