Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
と少年は躊躇もせず、畳の上へ点を打った。
「よし、その覇気で一生を貫け」
貴人、祖父、八代将軍吉宗、そう吉宗は喜ばしそうにいった。
少年は若き日の家治であった。
(俺にもああいう時代があった)
ウツラウツラとした心の中で、そう家治は呟いた。
(それだのにどうだ、その後の俺は?)
将軍職について二十四年、その間における生活といえば、何物か強い力によって、絶えず上から圧せられながら、酒と女と遊楽と阿諛と、「ああよろしい」「ああそうせい」といわれるままに従って、自分の意思など通そうとはせず、また通すことの出来なかった生活――そういう生活の連続であった。
こうして今の有様となった。
(後継だけは! 後継だけは!)
もう自分は余命とても少く、たとえ永く生きられたところで、身心を昔に取り返すことも、意思的生活をすることも、出来そうもなく思われた。
で、せめて後継だけは、最初であり最後でもある、たった一つの意思の貫徹! それとして自分で定めたい!
(養子ではあるが可愛い家斉を、どうあろうと将軍職にしたい!)
それとても現在の有様では、覚束なく危険に思われるのであった。