Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
「数日と申してたぶらかし、今夜あの駕籠で田沼殿を……」
「さようなこともあろうかと、今夜わしは出かけて来たのだが……貝十郎のことじゃ、何をやるか知れぬ」
「ではあの駕籠を誰何しまして……」
「余人であったら面目ない」
「わたくしにお任せくだされますよう」
その間に駕籠は近づいて来た。
黒塗りの金鋲打ち、引き戸に総を下げた駕籠であった。
擦れ違おうとした時熊太郎は、わざとよろめいて駕籠へあたった。
「失礼、ご免」
と周章てて怒り、寄って来ようとした供の者へ、そう素早く声をかけ、手では引き戸を開けようとした。
その熊太郎の耳へ聞こえて来たのは、
「これをお前から越中へ――定信の手へ渡してくれ。……妾から渡すのでござりますのね」という、若い女の情熱的の、しかしあどけない憧憬れるような、涙を誘うような声であった。
何んだやっぱり女だったのか。
熊太郎は駕籠から離れた。
その間に駕籠は行き過ぎた。
「殿、女でございました」
「…………」
「若い女のあどけない声で『これをお前から越中へ――定信の手へ渡してくれ。……妾から渡すのでござりますのね』とこのように申したのが聞こえました」