Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
「田沼殿の勢力は」
「さよう」と冬次郎は頷いたが、今度は憤った眼付きではなく、期するところある希望に燃えた、玲瓏とした眼付きで熊太郎を見詰め、
「しかし田沼の没落は、もう眼の前に迫っているよ。その前兆は幾個かある」
「ははあさようでございますか」
「子の意知が殺された。これが前兆の一つだな」
「いかさま、御意にござります」
「今お噂の出た越中守様が、溜間詰めとおなりなされた」
「ははあ、さようでござりまするか」
「これも不如意のご家計の中から、田沼へ進物をされたからじゃ」
「越中守様ほどのお方さえ? ……」
「お勧めしたのはこのわしじゃ。田沼にご進物なさりませとな」
「…………」
「溜間詰めは閑職ながら、時に老中と政務を議し、時に将軍家の顧問となる、重要の地位ということが出来る」
「…………」
「この地位へあの卿を置いたことが、田沼没落の前兆の二つじゃ」
「ははあ、さようでござりますか」
「みんなわしの取り計らったことさ」
「ははあ、さようでござりますか」
「時に今夜織江殿を、屋敷へ送って貰いたいものじゃ」
「心得ましてござります」熊太郎は胸を打った。「私お送りいたしませねば、危険のように存ぜられます」