Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
(九十郎は逐電したのだろう)
これは知れたことであった。
(いよいよ重なる怨みの九十郎! おのれヤレ討たいで置こうか!)
とはいえどこへ逐電したか?
それは全く不明であった。
どこから探してよかろうか? それとて見当はつかなかった。
お玉のお吉の心持ちは、今はひとむきに範之丞にあった。
溺死に近い若侍の、美貌に心を引かされて、女だてらに団八を殺し、この若侍を助けたのであったが、介抱しいしい日を過ごすうち、この若侍の生一本な、そしてどこか女性的な、それで純情で清々しい気質に、ほとんど狂気じみた恋慕の情を、寄せざるを得なくなってしまった。
(どうあろうとこのお方の心も体も、妾のものにしなけりゃア!)
女郎から妾、それから私娼、心も体も廃頽しきった女。――そういう女の一念は、処女などの思いとは違いあくどくて凄まじい。
そういう一念の凝った介抱に、伊織の範之丞は回復した。
「田舎を巡っておりましても、芽の出ることではござりませぬ。江戸へ参ろうではござりませぬか」
こうお玉のお吉はいった。
「江戸へ参るでござりましょう」
そう伊織の範之丞は応じた。
旅用の金は湖水へ落としてしまった。