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Japanische Klassiker mit Furigana

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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme

Aozora Bunko

織江に対する九十郎の態度、これはまた変ったものであった。

暴力などに訴えて、想いを晴らそうなどとはしなかった。

親の敵として自分を狙う、恐ろしい女であるがゆえに、いっそ後腹病めぬよう、討って取るのが至当だのに討ち取ろうともしなかった。

ただ一緒にいるのであった。

九十郎に助けられ、全く正気に返った時、織江の発した第一の言葉は、

「兄上はいかがなされましたか?」

この悲痛の問いであった。

と、九十郎は言葉少なに答えた。

「拙者この刀で斬りはしませぬ」

と。

(殺しはしないということだろうか?)

織江には疑問であった。

よしんば刀で斬らずとも、殺す方法はいくらでもある。

(殺したのか、殺さなかったのか? 生きているのか、死んでしまったのか?)

これについて織江は幾度も訊いた。

九十郎の答えは同じであった。

「拙者この刀で斬りはしませぬ」

漠然としてい、曖昧としていた。

二人の生活そのものが、漠然としてい、曖昧としてい、捕捉しがたいものなのであった。

あの夜二人は下諏訪宿まで走り、そこの旅籠へ宿をとり、九十郎は織江の介抱をし、高島城下の様子を探った。

司馬又助は無頼の浪人、殺されたのは諸人の幸せ、そんな塩梅に取り扱われて、高島藩でも下手人について、たいして詮索もしていないらしい。