Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
それを見送った田沼意次、
「貝十郎」
と忍び音に、しかし陰々とした鬼気ある声で、
「お浦を殺せ! いっそ今!」
「…………」
お浦の肩へ両手をかけ、かばうがように引き寄せながら、貝十郎はものもいわず、意次の顔を凝視した。
「お浦が隠し持っているという、将軍様よりのご遺言状、余にとって不利の品なること、いわずと知れて明らかじゃ。冬次郎の手や越中の手などへ、渡ればこそ恐ろしい。闇から闇へ葬って、湮滅さすれば何より簡単。……それにはお浦を亡き者にし、一切の証跡消すに如くはない。……お浦を殺せ、即座に殺せ!」
貝十郎否といわば、自身手を下して殺すとばかり、そういうと意次は佩刀へ手をかけ、廻廊からユラリと庭へ下り立ち、お浦の方へ刻み足して進んだ。
「否か! いやなら俺が斬る!」
抜かれた刀身が一瞬光った。
十一
「なりますまい」
と貝十郎はいった。
断乎とした声であった。
「お浦は狂女、正体なきもの、虫けらと同じにござります。虫けらを殺すはあまりに殺生、殿、ご寛大になさりませ!」
「黙れ! ならぬ!」
と威猛高に、意次は抜き身をふり冠った。
「大事の前の小殺生、それが何んだ、かまわぬかまわぬ! ……またもお浦をとり逃がし、冬次郎なんどの手に入らば、一切計画画餅となる! ……殺す、斬る、息の根止める! ……放せお浦を、放せ放せ! …