Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
感心さえもされるのであった。
ふっとお吉と比べて見た。
(比べものになんかなるものか!)
「田沼殿はお偉い方じゃ。それはもうもういう必要はない」
九十郎はいい出した。
「国を左右しておられるのだからの。……が、しかし老人でござる。……老人というもの厭らしいもので。……それに反してこの拙者、ご覧の通りまだ若い。……もっとも偉くはござらぬが。……偉いを取るか若いを取るか? ……こいつ全く考えものでござるて。……拙者が女なら若い方を取ります。……そこでそなたにおかれても……」
いって来て九十郎は馬鹿だな! と思った。
(俺はこの女の親の敵だ! なま優しい口説などしたところで、何んのこの女が聞くものか!)
で、黙ってまたジロリジロリと、織江の躯を見上げ見下ろした。
織江は一言も返辞せず、肩を縮め身を堅くし、無念に据えた鋭い眼で、刺すように九十郎を睨んでばかりいた。
彼女の心は決していた。
九十郎の手が身体に触れたら、その瞬間に舌噛み切って死のうと。
争って勝てる相手ではなく、身を穢されて生きていられる、相手でないことはいうまでもなく、そういう相手に迫られた場合、とるべき手段はただ一つ、穢されない前に死ぬことであった。