Classiques japonais avec furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Lisez 親鸞 (しんらん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 566 138 caractères · 1127 écrans
慈円は、壁ぎわにいる人々の顔までを、ずっと見わたして、
「誰か、仰せ出られる人はないのか」
「…………」いつまでも、座はしんとしていた。二人の長老も、実は、そこまで、争う本心はなかったとみえて、尻押しの学僧たちが、だまってしまうと、立場を失ったように、もじもじしていた。
「そも、おのおのは、入壇とか、授戒とかいうことを、俗人が、位階や出世の階梯でものぼるように、考えていられるのではないか、とんでもない間違いでおざる」慈円は、そこでもう、常の温柔な面と語気にかえっていた。濃い眉毛のうえに、ぼつんと、黒豆ぐらいな黒子がある。この容貌に、二位の冠を授けたら、どんなに、端麗であろうといつも人は見つつ想像することであった。
「いうまでもなく、入壇と申す儀は菩薩心への、達成でなければならぬ。生きながらすでに菩薩たる心にいたれる人に、仰讃の式を行う、それが、授戒入壇の大会である。なんで、いたずらに、その域へ達せぬものに、この大会大戒の儀をゆるそうか」
「…………」静かではあるが、慈円の声は、たとえば檜の木蔭を深々と行く水のひびきのように、耳に寒かった。
「――また、菩薩心に達したものはかの龍女のごとく、八歳にして、もう壇に入ることをゆるされた。